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亀井大臣のモラトリアム

2009年10月20日

亀井大臣のモラトリアム昨日のJMM(村上龍氏が主催するメルマガサイト)では
『亀井金融担当大臣が、中小企業の借金の返済猶予を提唱しています。平成の徳政令などと言われていますが、この政策をどう考えればいいのでしょうか。』
というテーマで各経済関係の専門化が意見を述べています。

7名の専門家の意見を要約すると、総じて否定的ないし問題ありということでしょうか。

亀井大臣が就任早々、突然とも思われるタイミングで出したこのモラトリアム提案は、中小企業にはさることながら、金融界に大きく物議を醸し出したようです。

昨年来の金融危機を契機に、銀行の自己資本の質を高めるための新たなBIS基準が合意されようとするなか、日本のメガバンクはその高いハードルに戸惑っていた矢先のこの金融大臣の発言です。
銀行の株価は9月に入り一斉にこけてしまいました。
東京三菱UFJなんて600円台から一挙に400円スレスレまで。

まあそれはどうでもいいんですが、このモラトリアムをどう見るかというと、事業再生の現場にいるものとして上記の専門家の先生方とは少し違う思いを持っています。

中小企業の社長さん方の感想はと言うと
『返済猶予はありがたいけど、それを言い出すと銀行からの信用がなくなりその後借入ができなくなるからね。』
恐らく、厳しい現実にある社長さんにとっても、大半はこのようなものなのです。

いわゆる町金から借りてきても、律儀に銀行借り入れの返済を遅れないようにする。
こんな経営者をどのくらい見てきたでしょう。
片や銀行の貸付担当者はというと、驚くことにそのような事実を知っていても自行の貸付金返済を優先させています。

これが今の中小企業経営者と銀行の現場の意識なんです。

専門家の意見にはモラトリアムは中小企業経営者のモラルハザードを招くとの文言が多くありますが、銀行のモラルハザードはもっと酷い。

昨年の秋、緊急経済対策融資保証制度がスタートしたときの銀行の貸し込み競争は予想通りでしたが、貸していい先なのかどうかの判断もなく、県の信用保証協会の保証(究極、国の100%保証)さえ付けば引き出せるだけ出したというのが現実です。
対象は保証の要件である『売上げや利益が3%以上減少している企業』ですので、必要以上に貸し込んでしまえばやがてキャッシュフロー不足で返済できなくなるのは自明の理です。
借りた資金を使い果たしてしまえばその資金不足を補うための借入れ(ハネ融資)は、最早めいっぱい貸してしまったあとですので期待できません。

僕も以前は銀行の支店長や本部の審査に携わった身です。
10年前の全く同じ保証バブルのときの後始末が身に染みています。

さてこのモラトリアムの可否について事業再生の立場で言うと、企業毎に3つのパターに分けられます。

① 再生の可能性が高いため非常に有効な企業。
② 資金繰りは助かるけど過剰債務の解消には至らず出口の見えない企業。
③ やってもやらなくても破綻しかない企業。

①はキャッシュフローを上げる手立てが残されているが返済に追われているため、事業改善のための投資資金が用意できない企業です。

中小企業の事業は銀行が言うようにコスト削減だけでは解決しません。
投資が細れば負の連鎖で縮小均衡からやがてキャッシュが生み出せなくなる。
一定期間、返済を棚上げすることで返済資金を投資に回しキャッシュフローが改善します。

パターン②は銀行返済前の収支がトントン。
業態の構造的環境から収支改善には無理があるため、返済が猶予されている間は生き延びられるが、景気が回復しても業況は上向くことなくやがて清算が必要となる企業。
小さな昔ながらのガソリンスタンドや衣料雑貨などの卸業など、販売対象が縮小していく業態です。

最後の③は元々が赤字体質を改善できない会社。
借入が可能な間は赤字を補填できますが、返済は猶予されてもニューマネー(新たな借入などの資金)が入らなくなった途端、資金ショートでバンザイです。
今年秋になって③の企業が急増しています。

残念ながら、構造転換を怠ったことで②や③の企業は、何れ退出しなければなりませんが、今のままの銀行の姿勢であれば、再生の可能性が高い①のような企業も破綻してしまいます。

銀行側としてはモラトリアムを実施する債権については、定められたルールに基づき適正な引当を行うなどの痛みを伴う訳ですから安易に応じられないというのは理解できます。
国際ルールも前述のように厳しい方向に動いている訳ですから。

しかし、6年前、金融庁が示したリレバンの精神はただのお題目だったのでしょうか。
あの精神が生きておれば、現場に立つ銀行員も、もう少しは審査能力に長けた人材が育っていたのではと思うのですが。

己の企業審査能力がないのを棚に上げて、二言目には『本部が・・・』を言い訳にする銀行員の氾濫には嘆かわしさを通して興醒めしてしまいます。
これも銀行の責任です。
政府の保証に寄りかかって自行の資産改善に走るなどモラルハザードもいいところ。

このことを認識させる意味では、今回のモラトリアム提案も強ち突拍子もない話ではないと思うのですが・・・・・。


大成経営コンサルティンググループ
(株)船井財産コンサルタンツ 
九州相続相談センター  
お問合せ:fzc-m@taiseikeiei.co.jp


Posted by 風街ろまん at 20:25│Comments(0)
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