こんさるたんと奮闘記

朝から福岡のとある地方都市を営業基盤としているタクシー会社に行ってきました。

その市にはタクシー会社が2社あるのですが１０数年前の買収で同じ社長が経営するグループとなっております。
４～５万人程度の商圏を実質１社が握っている構図で、競争は殆どない市場です。　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（事業免許を取り消された国際自動車）

しかしこの会社のネックは過大債務。

１社を買収するときの借入金も尾を引いていますがそれ以上に、３年前に他界した前経営者、今の社長の実父ですが、この故人の放漫経営に起因するところ大です。

バブル崩壊以降の地方経済の収縮の影響は色濃く、先代が半ば経営を投げ出す形で経営を引継いだのは気の毒な話でもあります。

タクシー事業については、平成１４年２月１日より需給調整規制廃止等を内容とする改正道路運送法が施行され、需給調整規制を前提とする免許制から輸送の安全確保等に関する資格要件を審査する許可制に移行しています。
要するに小泉内閣が進めた規制緩和方針に沿う措置でした。

これにより業界への新規参入が一挙に増えたのに相まって、大手のタクシー会社が次々と全国の主要都市部に営業所を増設。
加えて保有台数の制限が解かれたことから既存の会社もせっせと営業車を増やしました。
街はタクシーで溢れ返る始末です。

東京都市圏を除いては乗車人口が増えた訳ではありませんので、当然１台あたりの水揚げは減ります。
乗務員の賃金も下がります。
会社の売上げも下がります。

タクシー運賃は地域ごとに国土交通省の認可制になっており、個社ごとに自由にはできませんが、過当競争を勝ち抜く為に会社は深夜の割り増しなどを内緒で昼間料金で走るなどのサービスを行う。
水面下での値下げ競争です。

このいたちごっこで破綻する会社が続出したのですが、表向きは余裕のある会社がこれらのタクシー会社を格安で買収してきましたので営業車輌は減ることはない。
業界はサバイバルです。

一般的にタクシー乗務員の賃金は乗務員の水揚げの４５％から５５％で算定されています。
地方では乗務員一人当たりの１日水揚げも最近では２万円そこそこまで下がってきていますので、月額賃金は税込み２５万円程度です。
この賃金では子供を抱えた世帯では生活が成り立ちません。
違法の超過勤務状況が恒常化しています。
東京の国際自動車はそれが発覚し事業免許を取り消されました。

一方で地方の乗務員さんは一挙に高齢化しました。
年金が片手にあって初めて成り立つような仕事の環境になってきているからです。

国土交通省はこの現状に、規制緩和から強化へと舵を戻しました。
この6月、「タクシー事業適正化・活性化特別措置法」が参院本会議で可決されています。
新たな増車には規制が掛かります。
地区では一率１０％の減車申し合わせとなった地域もあります。

規制緩和は是か非か。

よく言われます。
既成の特権に守られて競争の努力をしていない。
認可制の料金も官製談合だ。
これも事実でした。
先代の社長が放漫経営でやってこれたのもその特権なのです。

しかし、勿論のこと消費者の保護や利便性の追及が一番なのですが、タクシー乗務員もまた消費者。
競争社会だからといって所得格差が闇雲に広がる社会が幸せな社会ともいえません。

また、資本力のある大手が資金力に物を言わせて零細業者を踏み潰していく様もどうも容認できません。

この頃では何処の地方都市にいっても郊外に大手流通業者のGMSが幅を利かせ、商店街の小売店は駆逐され壊滅状態です。
消費者が選んだと言えば聞こえはいいんですが、儲からないとなると容赦なく引き上げるのも彼らの資本の論理です。
経営はボランティアではない。

件のタクシー会社は競争相手がいない分だけ恵まれているのですが、逆を言えば市場は年々確実に縮んでいるということ。
自助努力も限界が見えます。


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